「わたしたちのウェルビーイング」共創ワークショップ

カードを使って「わたしたちのウェルビーイング」について考えよう!

未来が予測できない現代社会においては、多様な人々と対話する能力が必要です。子どもの頃からウェルビーイングに基づくコミュニケーションを行う事は、その能力を育むよい機会となるでしょう。お互いのウェルビーイングについて誰もが楽しく考えられるように作成したカードを使って、小学校で授業を行いました。

小学生×ウェルビーイングのカード×ワークショップ=「わたしたちのウェルビーイング」

「わたしたちのウェルビーイングカード」

「わたしたちのウェルビーイングカード」(ICCキッズ・プログラム 2021版):27種のウェルビーイングの要因とそのカテゴリが示されている。「I」は自分個人の要因、「We」は特定の他者との関係性の要因、「Society」はより広がった不特定多数の他者を含む社会との関係性の要因、「Universe」はそれらを超越したあらゆるものを含む視座をもつ要因。

仮説

自分と相手のウェルビーイングを互いに尊重し合い、共に考える場はどのようにつくることができるでしょうか。そのための第1歩は、自分や相手の「わたしのウェルビーイング」を共有することであり、そのうえで「わたしたちのウェルビーイング」について想像を広げることではないでしょうか。

経緯

コロナ禍により私たちの生活様式は大きく変化し、ウェルビーイングを見つめ直すきっかけになりました。また、日本では高齢化率が高まり続けています。内閣府の子供・若者育成支援推進大綱(2021年4月6日)の中でも、子どもたちのウェルビーイングを高めることの重要性が指摘されています。そこで、子どもたちが手に取りやすいカードをツールとし、自分やクラスメートのウェルビーイングについて共有し、集団でのウェルビーイングについて考えるきっかけを作ります。

実験内容

2021年6月に東京都中野区の新渡戸文化小学校を訪問し、「わたしたちのウェルビーイングカード」を利用した5年生向けの特別授業を行いました。子どもたちには、あらかじめ自分のウェルビーイングを3つ選んできてもらい、まず、それをグループで共有しました。その後、グループメンバーのウェルビーイングができるだけ満たされるように、「ウェルビーイングな休日~2泊3日の旅~」を考えるワークを行いました。

道具と手順

  • 「わたしたちのウェルビーイング」宿題シート
  • 「わたしたちのウェルビーイングカード」(裏面に具体例のイラストを記載)
  • 模造紙、ペン、マスキングテープ

事前の宿題

カードの具体例一覧を参考にし、自分にとってのウェルビーイングを3つ選んでおく

当日のワーク(45分x2コマ)

  1. ウェルビーイングに関するイントロダクションとカードの紹介
  2. 生徒5人1組のグループで、それぞれが選んだ3枚について選んだ理由や自分のウェルビーイングを紹介し合う(1人1分 × 5人=5分)
  3. 紹介されたウェルビーイングができるだけ満たされるような2泊3日の旅行のサンプルを紹介する
  4. 休憩
  5. 紹介された15のウェルビーイング(1人3つ×5人)がなるべく満たされるように、2泊3日の旅行を、グループで話し合って計画する
  6. 模造紙に3日間の行程をまとめる。該当するカードは模造紙に貼り込む
  7. 完成したら、教室全体で発表し合う

「わたしたちのウェルビーイング」宿題シート抜粋
「わたしたちのウェルビーイング」宿題シート抜粋

グループで模造紙にカードをはりつけ、旅行プラン描いている様子

グループで模造紙にカードをはりつけ、旅行プラン描いている様子

グループで模造紙にカードをはりつけ、旅行プラン描いている様子

工夫した点

  • 子どもたちがウェルビーイングを考えやすいように、裏面に具体例のイラストが書かれたカードを用意した
  • あらかじめグループワークのサンプルを用意した。その中には、子どもたちの自由な発想を促すため、宇宙旅行など現実には実現できない計画でもよいことが伝わる内容にした

ウェルビーイングな休日~2泊3日の旅~

実験結果

  • カードが助けになり、小学5年生でも自分のウェルビーイングについて考え、伝え合うことができました。子どもたちからは、「楽しかった」「もう一度やりたい」という声もありました。
  • 「自分にとってのウェルビーイングに気付いた」「友だちが幸せだと思っていることが分かり、より深く理解できた」「同じところや違うところがあることが分かった」という感想からは、自分と友だちの価値観を知り合うことで、お互いを尊重するきっかけになったと考えられます。そこからグループの皆のウェルビーイングについての話し合いに繋げることができました。

今後の展望

ウェルビーイングという言葉は、小学生にとってなじみのあるものではありません。しかし、カードに触れながら手を動かして考えることが、自分の体験や記憶を思い出し、言語化するきっかけとなりました。また、カードに書かれている要因(「成長」、「感謝」、「社会貢献」等)が、子どもたちの想像力を刺激するのに適切な抽象度だったようでした。今回はカードを授業中に使用しましたが、今後は、カードを家に持って帰って親子で行うなど、普段の生活の中で活用することも考えていきます。

関連情報

関わった人

  • 企画:渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
  • カード学術アドバイス・講師:村田藍子(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
  • カードロゴデザイン:駒﨑掲(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
  • カード編集協力:矢野裕彦(TEXTEDIT)
  • カードデザイン協力:楯まさみ
  • カードイラスト協力:岩瀬のりひろ
  • 記事執筆:近藤乃梨子

問い合わせ先

渡邊淳司: junji.watanabe [at] ntt.com
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