「それぞれのウェルビーイングエピソード」オンラインワークショップ

お互いのウェルビーイングを尊重してよい関係を作り合うには?

ウェルビーイングを共有するワークショップをオンラインで行うことで、年代や地域といった従来の枠組みを超えて多様な人々のウェルビーイングのエピソードを知ることができます。お互いの価値観を認識し合うことは、「わたしたち」のウェルビーイングをつくりあうことに繋がります。

オンラインxウェルビーイングのカード×エピソード=多様なウェルビーイングへの想像力

「それぞれのウェルビーイングエピソード」オンラインワークショップ

仮説

「わたしたちのウェルビーイング」が実現されるには、お互いの内在的価値(その人の存在自体の価値)を尊重することが必要です。そのためには、それぞれの人が何を大事にしているのかという価値観や、その価値観が生まれてきたエピソードを知ることは、その人のことを「わたしたち」と考える、一つのきっかけになると考えられます。

経緯

ウェルビーイングとは、一人ひとりの多様な幸せ(よい状態)のことをさしますが、何が“よい状態”かは、人によってそれぞれ異なり、具体的に「これ」と指し示すことは困難です。また、ウェルビーイングの評価を数値で表そうとすると、「なぜ」「どうやって」が見えなくなってしまいます。その人がどのように満足しているか、満たされているかを測るには、それぞれの価値観を尊重し、数字の背景にあるものを考えることが大切です。これまで、「わたしたちのウェルビーイングカード」を使って、自分のウェルビーイングに目を向け、それを他者と共有するワークショップを小学校や文化施設で実施してきました。今回は、コロナ禍であることもあり、多くの人が参加できるオンラインワークショップという場で、「わたしたちのウェルビーイングカード」オンライン版を使用して、多様なウェルビーイングのエピソードについて知るワークショップを行いました。第1回は、2021年10月24日に日本基礎心理学会公開シンポジウムの場で、心理学に興味を持つ高校生向けに行われました。

実験内容

「わたしたちのウェルビーイングカード」を用い、ウェルビーイングの要因に着目しながらウェルビーイングを見える化をしました。ウェルビーイングの要因には「I」「We」「Society」「Universe」の4つの分類があり(参考:『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために』(BNN、2020))、「I」は自分個人の要因、「We」は特定の他者との関係性の要因、「Society」はより広がった不特定多数の他者を含む社会との関係性の要因、「Universe」は、それらを超越したあらゆるものを含む視野をもつ要因です。一度に大人数で取り組むことで、多様な価値観に出会うことができます。

ウェルビーイングの要因

道具と手順

  • 「わたしたちのウェルビーイングカード」27枚セット(協力者に郵送)
  • 「ハイパーICC」で公開中の「わたしたちのウェルビーイングカード
  • 回答用Googleフォームと集計用スプレッドシート

  1. はじめにレクチャーでウェルビーイングの考え方を紹介
  2. 次に協力者とデモンストレーションを行う
  3. 参加者はオンラインでウェルビーイングカードを3枚引く
  4. ランダムに引いた3枚のカードの言葉から、自分にとってのウェルビーイングを結び付けて考える
  5. 回答フォームへ書き込む
  6. 集まった回答を一覧に表示し、自分や他人の回答を観察する(それぞれの要因を色分け表示)

わたしたちのウェルビーイングカード(オンライン版)

工夫した点

  • 協力者には、全員の前で自分のウェルビーイングについて語ってもらう時間を持ち、参加者にイメージをつかんでもらいました。特に、日本基礎心理学会シンポジウムでは参加者である高校生が身近に感じやすいように、年代の近い大学生に協力者を依頼しました。
  • 自分でカードを引いたような感覚があるオンラインサイトを作成する
  • 参加者のウェルビーイングが一覧で見ることができるページを用意する

実験結果

  • ランダムに3枚のカードを引くことで、偶然引いたカードが、普段意識していないことへ目を向けるきっかけとなりました。
  • カードをきっかけとしてその人の価値観を知ることで、その人のことを立体的にとらえられ、親近感を持つことができました。
  • 同じカードを引いていても、それぞれの人が異なる視点からウェルビーイングを答えているため、同じ要因でも、その人の背景によってウェルビーイングが異なることを知ることができました。

今後の展望

人と人との関わりにおいては、お互いが大事にしていることを丁寧に聞き、重なり合う部分を考えていくことが大切です。今回カードによって見える化された「わたしの」ウェルビーイングは、「わたしたちの」ウェルビーイングをつくりあう手がかりになるでしょう。

関連情報

関わった人

  • 企画・講師:渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
  • 企画協力:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
  • カードロゴデザイン:駒﨑掲(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
  • カード学術アドバイス:村田藍子(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
  • カードデザイン協力:楯まさみ
  • カードイラスト協力:岩瀬のりひろ
  • カード編集協力:矢野裕彦(TEXTEDIT)
  • ワークショップファシリテーション協力・記事執筆:近藤乃梨子
  • ワークショップスライド作成協力:宮脇愛良
  • ウェブコンテンツ制作:森浩一郎
  • 参考文献:『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために』(BNN、2020)

問い合わせ先

渡邊淳司: junji.watanabe [at] ntt.com
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